小林光一 無難な手で相手を圧倒
こんにちは。みやれーです。
小林光一さんといえば、『小林流』が有名でしょうか。
小林流、新小林流と二つも名前が付いた布石があることからわかる通り、小林光一さんは布石が上手いです。
一手一手は地を取る無難な手を選ぶ事が多いですが、布石を進めてみると、地でも厚みでも負けてないという、不思議な状況になるのですよね。
僕が言わずともその実績が物語っていますが、好調な時の光一さんは誰も手が付けられないくらいに強いです。特に本局は傑作でしょう。
実戦図1
棋譜再生
上図白6や黒7が時代を感じます。近年のプロはこういうゆっくりした手は打ちませんもんね。
黒15は白に断点を残し厳しい手です。
実戦図2
棋譜再生
上図黒3が当然ながら厳しい。白に上手い返し技があればいいのですけど、難しいようです。
白は仕方なく白4~8と構えましたが、黒9で先手を取って黒11の大場に回れました。
ここで黒17と打ったのが名手。白に地を与えるだけの手ですが、全局的なバランスを取って厚く構えたのです。
こういう手をさらっと打てるのが、小林光一さんの強さでしょうか。
実戦図3
棋譜再生
上図白2は上辺からカカる方が普通。
白6は厳しい打ち方。このあたりは加藤さんらしさでしょうか。
白22まではほぼ一本道ですが、ここで打った黒23がまた好手でした。白がどうやって生きるのか様子を見ています。
実戦図4
棋譜再生
上図白2は一番地を頑張った受けた方。しかしこの頑張りが白の判断を鈍らせたでしょうか。
白10が問題でした。今は中央を厚く打つ碁ではなく、黒11からえぐられては地合いで黒がはっきりリード。よって白10では11の地点へ打ち、地の均衡を保つべきでした。
実戦図5
棋譜再生
既に地合いは黒良し。厚みも負けておらず黒優勢です。
上図黒19、21とは手厚い。地は損ですが、黒25と白の攻めに回って、確かに黒不動の勝勢です。
実戦図6
棋譜再生
最終手まで載せました。(黒31まで)
黒中押し勝ち。
短手数での決着となりましたが、黒が盤面15目ほど勝っているので、投了やむ終えずです。
本局は小林光一さんの傑作でしょう。一瞬たりとも形勢が悪くなった時がありませんでした。それに総手数131手でここまでリード出来るのって凄くないですか?
地をしっかり取りながら厚みでも遅れない、光一さんの底深い強さが見れた一局でした。
この記事がいいと思ったら応援をよろしくお願いします。
Twitterもやってます。
13路盤でも使える定石 小目編
こんにちは。みやれーです。
前回の星編に引き続き、13路盤でも使える定石小目編をお送りします。
小目といえば、19路盤では歴史の深い着点でして、特に江戸時代、囲碁がとても盛んだった時代の主流が小目でした。
そのため、定石の数がとても多いです。年月を経てる分、研究が進んでいるのです。
しかし13路盤は狭いが故に、それほど難しい定石は使えません。
なので今回は小目定石の中でも、13路盤でもすぐ使える基本定石に焦点を当てて紹介します。
小目の特長
小目の位置
棋譜再生
上図の黒1、3や白2、4を小目と呼びます。一番近い隅から数えて縦四つ横三つ、もしくは縦三つ横四つ進んだ地点が小目です。
見てわかる通り、小目には向きがあるのが特長です。上図の白2ならば、左辺よりも上辺に近寄っていますね。
小目を打つ場合はこの『向き』に注意してください。コツとしては、大きいと思った辺へ寄せて打つ事。上辺が大きいと思えば白2へ打つし、左辺が大きいのなら左の小目の位置を変えましょう。
小目の定石1
オススメ度☆☆☆
基本中の基本定石。黒も白も自身が安定していて、わかりやすい定石です。
黒3は本因坊秀策が愛用した手でして、秀策のコスミと呼ばれています。漫画『ヒカルの碁』で藤原佐為が乗り移ったとされたあの本因坊秀策です。(名設定!)
小目の定石2
オススメ度☆☆
黒3の位置が小目の定石1と違いますね。上図だと白4のツケが成立するのが特長です。
ただ、この定石は難しくなる可能性があるのでオススメ度を低くしました。
参考図
棋譜再生
上図黒7と隅をアタリするのが難しい。白は8~12と反発しますが、そこで黒13と切ります。この図が難しくて、あまりオススメ出来ません。
小目の定石2の補足としては、白8の右へ打つ手がとても大きいヨセです。数字で言えば15目くらい。
ヨセに入ったらすぐ打ちましょう。
小目の定石5
オススメ度☆☆☆
黒3でハサミを選ぶ場合は、上図がオススメ。
ただ、白4ではたくさんの手がありすぎて予測がつきませんので、多少の怖さはあります。上図の定石であれば穏やか。互角です。
まとめ
今回は小目の定石を取り上げました。
薄々気付かれているかもしれませんが、小目は星と比べて、難解な定石になる可能性が高めです。難しくしたくない人は星へ打ったほうが無難でしょう。
実際に対局をする場合は、小目と星を組み合わせたりして、自分の好みの打ち方を探して楽しみましょう!
この記事がいいと思ったら応援をよろしくお願いします。
Twitterもやってます。
Master対AlphaGoZeroの棋譜5
こんにちは。みやれーです。
先に言ってしまうと、今回の碁は短手数で終わります。
おそらく読みの問題かと思われますが、打つ手がちぐはぐ過ぎて驚きます。
黒番AlphaGoZero。白番Master。
実戦図1
棋譜再生
両者の布石は大体決まっているようで、右下隅も左下隅も見慣れた形となりました。
実戦図2
棋譜再生
上図白4から黒の構えに突入してきました。石数は黒が多いですが、中々死ぬ事はありません。
白12~黒19となり、続けて打てばコウになるのですけど、なんと白は放置して上辺白20へ。
これでは打つ手がちぐはぐすぎて、問題でしょう。黒21と左上を取られたいした味もありません。形勢黒リードです。
実戦図3
棋譜再生
上図黒7に挨拶せず、白8とボウシしたのは品が良く上手そうな手。黒19までフリカワリとなりました。黒白ともに一子ずつ飲み込み、部分的に互角の分かれだと思います。
実戦図4
棋譜再生
上図黒3は人の目には悪手に見えますが、シノギの役に立つという判断なのですかね。
例えば、白26で中央の切りも気になりますが、黒3、19があると白も味が悪いので、おそらく切れないでしょう。Zeroがそこまで読んでいたかはわかりませんが。
実戦図5
棋譜再生
地を計算すると、黒がはっきりとリードしています。なので、中央の黒が攻められなければ、黒が勝ちです。
やはり左上の黒地が大きいですね。
実戦図6
棋譜再生
最終手まで載せました。(黒39まで)
黒中押し勝ち。
この両者には珍しく、短手数での決着となりました。それぐらいはっきりと差が開いています。
やはり問題は左上の白の打ち方。突入したのであればコウにすべきで、上辺に打ちたいのであれば、左上隅には触らず打つべきでした。実戦ではただの悪手です。
結果的にはそこで勝負が決まってしまいました。後は黒の見事な収束を見るばかりで、白にチャンスらしいチャンスが巡ってきませんでした。
この記事がいいと思ったら応援をよろしくお願いします。
Twitterもやってます。
囲碁の七冠と将棋の七冠って結局どっちが凄いの?二つの七冠を徹底比較!
こんにちは。今年の漢字は七冠の『七』で決まりだと思っていたみやれーです。
先日、囲碁将棋界から超超ビックなニュースが飛び出してきました。
日本中で話題になりましたね。両先生ともに歴史上でも最高の成績を残されている棋士ですので、国民栄誉賞も納得です。
この賞を受賞するにあたって、キーワードとなっていたのが『七冠』でした。
囲碁将棋ともに最高峰のタイトルと位置づけられているものが七つありまして(将棋は現在八つ)、七冠とはつまり、その最高峰のタイトルを全て優勝した人に与えられる称号です。
井山さんは七冠を二度達成、羽生さんは永世七冠を達成ということで、たくさんの所でニュースになりましたね。今さらここで語る事もないくらい、世間一般に知れ渡っているでしょう。
こうして囲碁将棋両界に井山さん、羽生さんというスーパースターが同時期に存在する事になった訳ですが、こうなってくると、興味が沸いて来る話題が一つあります。
囲碁の七冠と将棋の七冠って結局どっちが凄いの?
もちろん別のゲームですから純粋に比較出来ない事は百も承知。しかしそれでも抑え切れぬ僕の好奇心を満たすために、この二つの七冠を徹底比較しようと思います。
囲碁将棋の七つのタイトル
まずは囲碁将棋界の七つのタイトルを羅
列してみます。
・棋聖戦
・名人戦
・本因坊戦
・王座戦
・天元戦
・碁聖戦
・十段戦
将棋
・竜王戦
・名人戦
・王位戦
・王座戦
・棋王戦
・王将戦
・棋聖戦
(新棋戦である叡王戦は省きます。)
それぞれ上記の七つになります。
今回は『凄さ』を比較するので、この七つをたくさんの角度からを見ていくことが重要です。
なので、まずはこの七つを優勝する難しさ・・・・
ではなく、
お金の話をしましょう。
七大タイトルの賞金を比較
最近ニュースなどで聞いたことはありませんか?
トップ棋士は億を稼ぐって。
なのでまず、七つのタイトルの優勝賞金をそれぞれ出してみましょう。
・棋聖戦 4500万円
・名人戦 3300万円
・本因坊戦 3000万円
・王座戦 1400万円
・天元戦 1300万円
・碁聖戦 800万円
・十段戦 700万円
合計 1億5000万円
将棋
・竜王戦 4320万円
・名人戦 2000万円
・王位戦 1000万円
・王座戦 800万円
・棋王戦 600万円
・王将戦 300万円
・棋聖戦 300万円
合計9320万円
調べてみると「あれっ?」て思いました。囲碁と将棋で賞金に差があるのですね。
賞金額で見ると、囲碁の方が凄いようです。
挑戦手合いの対局数
囲碁将棋ともに決勝戦は、その年予選を勝ち抜いてきた『挑戦者』と、前年度にそのタイトルを取った『タイトルホルダー』の二名で争われます。
これを挑戦手合いと言いますが、これは両者で複数回対局をし、勝ち越した方が勝ちの『番勝負制度』が使われています。
七つのタイトルはそれぞれ何番勝負が採用されているのか、見ていきましょう。
・棋聖戦 七番勝負
・名人戦 七番勝負
・本因坊戦 七番勝負
・王座戦 五番勝負
・天元戦 五番勝負
・碁聖戦 五番勝負
・十段戦 五番勝負
合計41番
将棋
・竜王戦 七番勝負
・名人戦 七番勝負
・王位戦 七番勝負
・王座戦 五番勝負
・棋王戦 五番勝負
・王将戦 七番勝負
・棋聖戦 五番勝負
合計43番
比べてみると、将棋の方が2番だけ多いのがわかりますね。
多いほうがより大変なので、挑戦手合いの数だとやや将棋の方が凄いです。
ちなみに、プロ入り一年目の棋士が一年で七冠を達成しようとした場合の対局数も計算してみました。おまけ程度ですけど。
138局
将棋
125局
(名人戦は通常一年目でタイトルを取れないので、飛び入りでA級に入ったと過程しました笑)
囲碁の対局数が多い理由は、予選は囲碁の方が多いからでした。実際に一年目で七冠をやろうとしたら、一年間ほぼ毎日が対局になってしまいますね。七冠制覇する前に死にそうです。
一局の持ち時間の長さ
こちらも同じ理屈で、持ち時間が長いだけ優勝するのは大変です。
タイトルごとに挑戦手合いの持ち時間を出していきましょう。
・棋聖戦 8時間 (二日制)
・名人戦 8時間 (二日制)
・本因坊戦 8時間 (二日制)
・王座戦 3時間
・天元戦 3時間
・碁聖戦 4時間
・十段戦 3時間
合計 37時間
将棋
・竜王戦 8時間 (二日制)
・名人戦 9時間 (二日制)
・王位戦 8時間 (二日制)
・王座戦 5時間
・棋王戦 4時間
・王将戦 8時間 (二日制)
・棋聖戦 4時間
合計 46時間
という結果となりました。
持ち時間的には将棋の方が相当多く、凄い体力が必要ですね。
13路盤でも使える定石 星編
こんにちは。みやれーです。
最近の囲碁界は13路盤が熱いですね。無料アプリでも13路盤は人気ですし、19路盤より狭いぶん、短い時間で一局打ち終えれます。
13路盤はお手軽に囲碁を楽しむのに最適と言えますね。
しかし、公式戦では19路盤が使われいるということもあり、19路盤を題材に解説しているものが多く、「13路ってどう打つんだ?」と首を傾げる方も多いのではないでしょうか?
なので今回は、13路盤ですぐ使える星の定石を紹介していこうと思います。
星の定石2
オススメ度☆
上図の定石は、囲碁で初心者が一番最初に覚える定石と言っていも良い定石ですが、13路盤ではオススメ度低めです。
それは19路盤と違い、隅同士が近すぎる事に由来します。
参考図
棋譜再生
例えば上図で見てみると、黒1~5は定石の手順ですが、右下隅の星と、黒5が近すぎてバランスが悪くなってしまいます。
このように、星の定石2は周りの配石によって悪くなることが多いので、オススメ度低め。それと比べると星の定石1の方が使い安いと思います。
星の定石3
オススメ度☆☆
上図はわかりやすく、黒白ともに形がしっかりしていてオススメ。
ですが、今後戦いが起こりにくい定石でもありますので、「戦いが得意」、「戦いが好き」という方には不向きかもしれません。
星の定石5
オススメ度☆☆☆
上図は黒の地対白の厚みとはっきりしています。地が好きな人は黒で打つのがオススメ。ですが白の厚みも相当なもので、不満はありません。互角です。
補足としては、白4の上に断点が残ってますよね。後々黒から切る手が意外と厳しいので、そこで戦いが起きる可能性があります。
星の定石6
オススメ度☆
上図はあまりオススメではありません。というのも、後々の戦いが難しすぎるのです。右上隅がまだまだ黒地では無い事と、白の構えも打ち込まれたらどう対応するのか。難しい戦いになりそうです。
もちろん、その戦いが問題ない方は使って良いと思います。
星の定石9
オススメ度☆☆☆
最後は黒の星に、白2と三々に入った場合です。黒の厚み対白の地の定石になります。
基本的には黒の厚みが右辺、上辺、中央全てに睨みを利かしていて、黒が勝ると思ってもらって良いです。
ただ最近は白2の三々入りが流行りなので、黒の対応策として紹介しました。上図のように無難に打っておきましょう。
まとめ
今回は13路盤でも使える星の定石を紹介しました。
星の定石2のように、19路盤では定石とされてる手でも、13路では使いにくい定石があるので、気をつけて使ってください。
この記事がいいと思ったら応援をよろしくお願いします。
Twitterもやってます。
棋士の独創的な一手集 昭和後期編
こんにちは。みやれーです。
人はそれぞれ別々の感性を持っています。囲碁はそのゲーム性から、その人の感性が盤上によく現れ、人として面白ければ面白いほど、比例して碁の内容も面白くなるのです。
なら例えば、僕が面白い碁を打ちたいと思うなら、面白い人になったり、面白い人生を送れば、そういう碁が打てるようになるのですかね?
藤沢秀行
藤沢秀行さんは囲碁界でも特に破天荒な棋士です。お酒は大好きだしギャンブル好きだし、数々のエピソードは有名ですよね。
盤上でも結構破天荒な所があって、いろんな工夫を試されています。
黒15のぶつかりは凄い手ですね。この体当たり感がいかにも秀行さんらしい、中々マネ出来ない手です。
趙治勲
趙治勲さんは結構気合いを重視される棋士なので、派手な展開になることが多い。また、武宮さんとは真逆で地に辛い棋風です。
黒15は右辺へ打つのが普通ですが、治勲さんはあえて上辺へ。白16が強烈な抑えなのですが、黒19と三々に入り、徹底的に地を取る構え。とても治勲さんらしい碁だと思います。
AIにも真似出来ない?棋士の独創的な一手集 昭和前期編
こんにちは。みやれーです。
つい先日、AlphaGoを開発したDeepMind社が、囲碁の学習ツールとして『AlphaGoTeach』というものを発表しました。
これは、一手ごとにAlphaGoが考えている評価値を見せてくれたりだとか、布石ごとにAlphaGoならこう打つ。棋士だとデータ的にこう打つ。みたいな、言わばAlphaGoの頭の中をのぞき見させてくれるようなツールです。
もちろんとても話題となり、僕も発表当時は胸が高鳴りましたが、実際触ってみての印象は、言うほど勉強にはならないなといった感じです。
何が不満だったかと言えば、評価値を見せてくれている割には、検討出来る幅が狭すぎるのですよ。AlphaGoの考えている手しか検討が出来ないから、こう打ったらどう返してくるのか?みたいな自分なりの検討が出来ない。そこがとても不満です。
なのでAlphaGoTeachは、常識的な布石をAlphaGoが評価してくれた。みたいな感じですね。
今さら言う事ではないですが、現代のAIはとても強いです。世界のトップ棋士でも勝てないかもしれないといった状況。
そんなAIが、良い手か悪い手かを数字で出して来る時代に入った訳ですから、その変化とともに、勝つことの『価値』も変わってくるのではと思うのです。
つまり、良い手だけを打ち続けて勝って、囲碁ファンは喜ぶのか。勝てば官軍の時代は終わるのではないか。
例え悪い手でも、例え負けても、その人だから打てる独創的な一手を囲碁ファンは求める時代がくるのではないか。
そういう考えに至ったため、今回は棋士の独創的な一手を集めようと思います。
以前、古碁の楽しみ方という記事で似たような事をやっていて、その時は江戸時代~明治時代までの棋士を紹介しているので、今回は昭和前期編として、棋士の独創的な一手を紹介します。
鈴木越雄
僕がどうしても紹介したいのがこの人。鈴木越雄さんの中央思考は目を見張るものがあります。
黒番鈴木越雄
棋譜再生
黒5が凄くないですか?これこそ善悪を超えた独創的な一手。始めてこの棋譜に出会った時は本当に感動しました。
総譜も紹介しているのでそちらもどうぞ。