囲碁は好きですか?

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第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負第六局 井山裕太VS山下敬吾

どうも!こんにちは。みやれーです。

3月7日、8日の二日間、神奈川県箱根町「ホテル花月園」にて第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負第六局が行われました。今記事では封じ手以降の手順について触れますので、一日目の進行については前回記事を参照ください。


前回記事

二日目

前日は白番の山下敬吾九段が82手目を封じました。黒が実利で先行し、白が厚みから黒石の攻めを開始した局面でしたね。では封じ手を見ていきましょう。


黒番 井山裕太 白番山下敬吾

封じ手

封じ手は白1のグズミでした。大本命が順当に打たれましたね。ただ本命ということは、黒はこの手を一番に予想して作戦を組み立てている訳ですから、今後のしのぎ方に注目したいです。

実戦図1

黒は2のノゾキを用意していたようです。少し読みが必要な局面なので後術しますが、4の地点へ白がツグのは少々味が悪いようです。そのため白3で元の憂いを断ち、黒は4と切ってサバキ形を作りました。

実戦の進行を見ると黒2は上手い手でした。黒10に白11と断点をツグ事になり、先手で下辺に余裕を持たせて黒12の大場へ先行。黒は白の攻撃をしのぎました。

参考図

白3とこちらをツナぐのは、黒8と切られた時に頭が痛い。黒2のおかげで黒10と打つ連携が取れ、更に黒12が左下黒16と逃げた時のシチョウアタリになっています。このシチョウを逃げられると白がバラバラとなり、黒石を攻めるどころが自身の心配をすることになりそうなので、この図は白が不安ですね。実戦が一番厚い攻めです。

実戦図2

下辺の黒石はまだ二眼確定ではありませんが、すぐ攻めるには準備不足と見て右上へ転戦しました。しかし白1のノゾキから白3とツケ、更に白5と切った厳しさは想像を絶するものがあります。部分的に三々にさえ入れば簡単に地を荒らせた場所ですので、これは通常では形勢悪しと見た勝負手と言えるでしょう。

実戦図3

しかし厳しさとは反面に脆さも抱えているもので、黒石を切った反動から右上隅の白石に死の危機が迫っています。一見、黒9と切られて脈が無いように見えますが…

実戦図4

白1のマゲが妙手でした。石とは中々死なないものですね。結果的に白7までで決着し、右上隅は無条件の生きとなりました。白1の意味について少し解説します。

参考図1


黒4(白3の左)

まず単に白1と打った場合ですが、黒4のホウリコミが好手で先に白がアタリとなります。これは駄目ですね。

参考図2


白3(黒4の上)

そのため先に白1へ先んじるのですが、黒があくまでも丸取り狙いで黒2と打てば、白3、5が好手順。白7で黒四子をアタリにすると、白1が上手く働いてコウになります。このコウは黒の被害も大きいので、白が成功ですね。

参考図3

ただ黒は2と抑えれば隅の白石はコウになりました。しかし白7等コウダテは白に多いため、結局コウは争えないと見ての実戦だったようです。井山棋聖の冷静な判断ですね。

実戦図4

黒5と切って白六子は取れました。とても大きな手です。

ここで満を持して白6から攻めを開始。白10と左辺に持たれながら下辺を睨みます。日本囲碁界一の剛腕で知られる山下九段の本領発揮です。

実戦図5

黒の眼形らしきものは下辺の一眼しかないので、中央でもがくしかありません。一応黒11と頭を出したものの、まだこの先は前途多難。勝負は一気に緊迫してきました。

実戦図6

黒7と一間に飛び出したものの、白8のアタリから上辺にも白壁を生成。見た目では黒が苦しそうに見えますが、どうしのぐか…!

実戦図7

白6は先手と見なくてはいけないので、黒5と打ってもまだ脱出出来ていませんね。しかしここで白は8と左上隅へ展開。黒は9と中央を補強することで、一息ついたように見えます。

参考図1

見てる側としては白1と切って最後の攻防を見せて欲しかったところですが、よくよく読んでみると黒8が好手で、白が上手くいかないみたいです。

参考図2

白1と断点をツナげば黒2から出切ります。この時中央の白石の眼が危ないため白9と戻らざるを得ませんが、黒10と打たれて、下辺にもう一眼出来ますね。白11で14の地点へ打っても、下辺の白石がもたないです。

際どい勝負でしたが、山下九段は切っても黒石を取れないことを読み切ったのでしょうね。仕方なく実戦を選び、まだ後半に望みを託します。

実戦図8

白1と詰めて左辺の黒石の眼を狙います。やはり地合いでは黒が先行してるので、白は何処かしらを取ることを目標としています。

実戦図9

白2のマゲに黒3とカケツいで中央を安泰にしました。残す問題は左辺の黒石だけ。

実戦図10


白4(黒5の左)

しかしここに来て、盤石に見えた井山棋聖の足取りに乱れが生じました。黒1とアテた瞬間、この碁は劇的な大逆転を迎えたのです。

実戦図11


黒7(白8の右)

黒3のアタリに白4の置きが手筋で、なんとこの黒石は、左辺だけでは二眼を作れなくなってしまったのです。まさかの頓死…。井山棋聖が何処で読みを間違えたのか分かりませんが、山下九段の必要なまでの粘りが生んだ、執念の大逆転でした。

一応黒9とノビる手があり、碁はまだ続きます。

実戦図12

左上は黒8、10が好手で一手ヨセコウになります。しかし一手ヨセコウでは、コウダテで白が僅かに勝るようです。再逆転には至りません。

参考図

遡って白1の切りには黒2とツグのが正解でした。これだと黒8まで左辺を生きることが出来、ヨセ勝負ながら黒優勢を保持出来ていました。勝利が手のひらから溢れた瞬間でしたね。

実戦図13


白1、白7、白13、白19(黒22の左コウ取り)
黒4、黒10、黒16(黒22の地点コウ取り)

白23手完。白中押し勝ち。

最後はコウダテの不利を見切っての投了となりました。

まとめ

第六局は挑戦者山下敬吾九段が大逆転の勝利!これで通算成績を3勝3敗の五分に戻し、第43期棋聖位の称号は最終第七局に持ち越されました!!


一日目から井山棋聖が優勢との声が出ていましたが、二日目の終盤までその優位を維持していました。しかしそこへ至るまでの山下九段の際どい粘りが、表面上の形勢では見えぬものの、地道に地道に、井山棋聖の身体を蝕んでいたのでしょう。最後は井山棋聖のミスで逆転という形になってしまいましたが、これはやはり、劣勢の局面を耐え続け、時に激しく、時に冷静に、勝負手を繰り出し続けた山下九段の粘りがもたらした、たった一つのミスだったと言えるでしょう。互いに死力を尽くした素晴らしい名局でした。



次の最終第七局は、3月14、15両日に、新潟県南魚沼市「温泉御宿龍言」にて行われます。


遂にきた最終局。第43期棋聖戦を締めくくる一戦はどんな名局が産まれるのか!とても楽しみです。




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