第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負第五局 井山裕太VS山下敬吾
どうも!こんにちは。みやれーです。
2月28日、第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負第五局の二日目が行われました。今記事では封じ手以降の感想を書いていくので、一日目の手順は前回記事をご参照下さい。
前回記事
二日目
前日に50手目を白番の井山裕太棋聖が封じました。二択のうちのどちらを選んだのか、見てみましょう。
実戦図2
黒4、6から一子を捨て石にして黒10まで生きました。ただ白11で黒二子がシチョウに取られ、とても手厚くなるので、部分的な折衝ははっきりと白有利な形となります。なので前図の黒4のような切りは危険であり、避ける一手かと思っていましたが、黒は敢えてその不利を甘んじ、代わりに得た先手を使って黒12へ先着するのが予定の行動だったようです。つまり山下九段は、左上は先手で切り上げることが何よりも大事と考えていたのですね。
参考図1
前回記事で示した図の再掲になるのですが、黒1とマゲていた場合は白に先手が渡る可能性が大でした。しかしこの図が相場として、次に白が右辺に回る展開を僕は予想していましたが、山下九段の着手を見ると白18と中央へ打たれるのを嫌ったのかもしれませんね。左上の黒地も立派ですが、先手をより重視しました。
参考図2
また、黒1の切りには白2から三子を取って実利重視でいく作戦もあります。この場合は黒11のヒラキが大き過ぎるので、いくら山下九段でも後手に甘んじると思いますが、そこで白12と右辺に先行することは出来ました。ただ部分的には実戦の図の方が白有利なので、井山棋聖は実戦を選んだのでしょう。
先手を巡る面白い駆け引きでした。
実戦図3
白は1〜5と打ちましたが、黒6とノゾかれて白の眼が増えているようには思えません。右辺でしのぐだけならもっと良い手がありそうです。おそらくですが白1〜5は黒石のダメを詰める、言わば体当たりのような意味合いが強いのでしょう。井山棋聖の厳しさが表れています。
白は7、9でサバキを目指しました。
実戦図4
白2は先手。続けて3の地点へ打たれると黒が危険です。
白10と黒13の交換は隅を固めて損な意味があるのですが、白14と一歩でも早く頭を出したいがための準備でした。ここは選択肢が多そうな局面だけに、井山棋聖の判断内容が気になりますね。
実戦図5
白6は激しい切り。黒5のハネを生意気だと言っていますが、中々気付かない最強手です。もちろんシチョウは白良しなので、黒7とノビて戦うことになりますが、周りは真っ白なのでこちらも油断なりません。
実戦図7
白石を包囲する黒1のカケが好手。白は4のグズミが唯一の脱出手段ですが、黒7の二段バネから黒13、15と白石の間を突き抜くことが出来、黒が非常に元気が出る結果となりました。
実戦図11
白5のコウダテに黒は受けましたが、黒8のコウダテに白は受けず白9と解消しました。この結果中央左側の黒石は全滅しましたが、黒10と打って右辺一帯の白石も全滅。史上稀に見る超巨大なフリカワリです。
戦いが終わったので形勢判断をしてみると、元の地合いが黒リードだったこともあり、はっきり黒良しの形勢です。しかしかといって白9で右辺を受け、コウを争おうにも白にコウダテがありません。白としては中央の黒石をコウではなく、無条件で取るしか勝つ道は無かったようです。
実戦図12
黒36手完。黒6目半勝ち。
最後は大差でしたが、戦い後すぐの終局でしたので、井山棋聖の計算が正確に出来ていなかったのではないでしょうか。お互い100目を超える地にたくさんのアゲハマがありますからね。数えて黒6目半勝ちでした。