平成四天王 張栩
こんにちは。みやれーです。
囲碁のルールって、実は単純なものが多く、「やってはいけない事」がとても少ないのです。
そのため、囲碁は自由度の高いゲームと言われますが、それをとても複雑にするルールが一つあります。
それはコウです。
将棋で言えば千日手みたいなもので、同一局面が反復する事を防ぐために設けられたルールですが、これがとてもややこしい。
初心者にルールとして教えるのはもちろん、強くなった後でも、コウがある事で局面が複雑になり、頭を痛めます。
いくら碁が複雑になっても間違えない正確さと、勝利に対する強い執着心を持って、当時史上初となった五冠達成、史上二人目の七大タイトルグランドスラム達成、世界戦優勝など、数々の記録を打ち立てました。
僕が囲碁の勉強を本格的に始めた頃は、調度張栩九段が天下の時代で、めちゃめちゃ憧れてましたね。
今でも大好きな棋士です。
直接お話した経験はまだないのですけれど、一度だけ日本棋院の前の坂ですれ違った事があって、その圧倒的なオーラを前に身体が動かなかった思い出があります。
確かその日は木曜日で、張栩九段も対局がある日だったので、殺気立ってたのですかね。
今回はそんな張栩九段のコウの名局をご紹介します。
実戦図1
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黒の山下九段が石を上に持っていく棋風なので、張栩九段もそれを意識して石を高く打っています。
左辺で早速の小競り合い。黒はしっかり自陣を強化してから、黒29と反撃に出ました。
実戦図2
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早くも石が切れて、戦いが起こりそうな気配。
現在並んだ白五子に目がありませんが、上図白16と厳しく仕掛けました。もちろん黒17と裂いて出てきますが、そこで白18がモタレてサバくテクニック。
張栩九段の得意なコウが始まりました。
実戦図3
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前図から始まったコウは、基本的に黒は負けられないコウです。コウを打ち抜かれると被害が大きく、我慢すると形が崩れますからね。
となると、黒はどこかで白の連打を許さなければなりませんが、上図白8、10で手を打ちました。
白としてはコウの結果、黒石を切れる事に成功しましたから、上手い仕掛けだったと思います。
ただ、白18で隅の白石を生きる事は出来たのですが、あえて捨てる決断をしました。
中々隅が大きそうに見えますが、どう決着するのでしょうか。
実戦図4
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上図白12までが全て先手。この利益があるから隅を捨てる決断をしたのですね。
しかも後々出てきますが、隅には少しだけ味があります。
黒15からまたコウが始まりました。しかし先程のコウとは違い、どちらも負けていい軽いコウです。
結果的には黒がコウに勝ちました。
実戦図5
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上図白2は盤上最大。右上隅の黒は裾が空いていて地になりそうもないので、黒3と辺に打つ一手。
問題は黒石に目があるかどうかですが、まあ死にはしないですね。
実戦図6
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上図黒1と頑張ったため、隅は白の三手ヨセコウとなりました。
コウではありますが、黒としてはコウに負けるまでだいぶ時間が掛かるので頑張ったのでしょう。基本、三手ヨセコウは負けないものですし。
しかし張栩九段は直ぐに三手ヨセコウを仕掛けました。
白18、24、30は目数がほとんど無い手。コウに負けるとこれらの手が無駄になってしまいますので、白はこのコウに勝つしかなくなりました。
実戦図7
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上図黒1に対し、隅の三子取りをコウダテに使わず、最後まで取っておくのが上手い。後術しますが、最後のコウの取り番が違ってきます。
実戦図8
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上図黒1に対し白2で、ついに黒石のダメを詰め終わりました。
この時、隅の三子取りのコウダテが残っているため、互いに詰めていくと白がコウを取って、黒がコウダテをする番になります。もし、三子取りを先に打ってしまうと、白がコウダテをする番になってしまいますので、一手の差があります。
黒13からはコウダテ作り。
結果白が三手ヨセコウを勝ち切り、黒が左上を破壊する結果となりました。
これで左上の隅が全て黒地ならばいいのですが、白26が妙手。
白優勢となりました。
実戦図9
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最終手まで載せました。(黒65まで)
白8目半勝ち。
コウが三回も現れる内容の濃い碁でした。
この碁のハイライトはやはり三手ヨセコウを勝ちにいった場面ですね。
中々三手ヨセコウを勝ちにいくのは勇気のいる行為で、ヨミ切りでないと打てないかもしれません。
張栩九段のヨミの正確さやコウの上手さが光った名局でした。
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