囲碁は好きですか?

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ワールド碁チャンピオンシップ2019一回戦!張栩VS申眞諝

どうも!こんにちは。みやれーです。


3月18日より、日本棋院東京本院にて「ワールド碁チャンピオンシップ2019」が始まりました。本戦シード組4名と、予選を勝ち上がった4名の計8名が、三日間かけて世界一の称号を争います。

この棋戦は日本主催の国際棋戦ということもあり、日本国内の盛り上がりは最高潮。自国からは井山裕太九段と張栩九段という大スターが出場していて、低迷中の日本勢から久々の世界戦優勝をもたらしてくれるのではないかと期待が高まります。

そんな中から今記事では一回戦、張栩九段VS 申眞諝九段の対局をお送りします。


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張栩九段VS申眞諝九段

去年の秋、井山裕太当時六冠との死闘を制し、久々の名人位に返り咲いた張栩九段の登場です。

何を隠そう、僕ことみやれーは張栩九段の大ファンです。張栩九段が居たからこの世界に足を踏み入れたと言っても過言ではないくらいのファンです。だってかっこいいだもん。

対する申眞諝九段は韓国代表の19歳。まだ若いですがLG杯、百霊杯といったメジャーな世界戦でのベスト4を経験。早碁の世界戦でも準優勝を経験しています。未だ世界戦の優勝経験はないものの、国内棋戦での活躍などにより、韓国棋士ランキングでは現在1位。そして囲碁世界レーティング(非公式)でも現在1位を獲得しているなど、その実力は誰もが認めるところです。

こちらは元世界王者とはいえ、現在の成績では申眞諝九段が格上。日本勢の世界一奪還に燃える張栩九段が挑みます。


黒番 張栩 白番 申眞諝

実戦図1

小目VS星の立ち上がり。黒7のコスミツケがやや珍しいでしょうか。確実に隅を取る意味の手ですが、その分白6の石を強くしていまうので一長一短ですね。

白は10とツケてきました。奇抜ですが近年流行りの一手です。

実戦図2

白は9まで先手を全て決めてから白11のヒラキに回りました。このヒラキは1〜10までの交換をしなくても打てた手なので、申九段はこの1〜10を白の利かしと判断しているという事ですね。前時代的な考え方からすると少し首をひねりたくなる打ち方ですが、これが進歩なのか、形勢に影響は出ないようです。

実戦図3


白10(黒5の左)

黒は1の即三々入りを選択。定石手順で進みますが、途中黒11はシチョウ有利を見越したアタリ。今すぐ黒11の上へ白がアテててきても逃げられる事が確認出来ると思います。

白16は右上の「利かし」を利用した手ですね。右辺を模様化する大場です。

参考図1

部分的には黒1と単にカカえる手が定石です。今後黒3、5と切った石を動く実戦例と、軽く捨てる実戦例がありました。

参考図2

ただこの局面だと白4で一目抜いて白6とコウを仕掛けられるかもしれませんね。白8にコウダテがあるので白も十分成立しています。黒1だとこの図も読む必要があるので、実戦の方が簡明で不満無いでしょうか。

実戦図4

黒はまた1の三々入りです。これで黒が四隅を占めましたね。張九段は徹底的に地を稼ぐ作戦のようです。

白6は巧妙なシチョウアタリ。白8のシチョウは黒有利と言っていましたが、面白いので逃げてみましょうか。

参考図

実際に逃げてみるとわかりやすいですね。白38のアタリで黒は逃げ道を失います。実戦のシチョウアタリが上手く働いています。

実戦図5

黒1は驚きの一手。ここに目が行くのは世界広しといえど張栩九段くらいかもしれません。

というのも、現在一番大きな模様は左辺であり、下辺も広くて大きそうな場所です。まだまだ魅力的な場所がある中で、敢えて右辺の狭い場所を無理矢理こじ開けに行くような黒1に発想を飛ばせるのが凄い。善悪はわかりませんが、この構想は面白かったです。

実戦図6

黒12まで二線を五連打して白模様を荒らしました。通常「二線は負け線」などと言われ良くない場所とされますが、張九段は実利先行を徹底しています。ただ形勢はやはり、白有利と見るのが一般的です。

実戦図7

白は5と中央を広げ、黒は6で下辺に足を伸ばしました。

白9はバランスを取った一手。広げ過ぎると打ち込まれ、狭過ぎると地合いで負けるということで、白9が申九段的にその中間のバランスだったのでしょう。もちろん右下のシチョウを取っている意味もあります。

実戦図8

白2を利かしたり白10と切ったり、白から鋭利な手が飛んできますね。ここが仕掛け所を判断しましたか。ただ黒は戦うことをせず、地味大きな黒13のサガリに回りました。左上の形はこのサガリが非常に大きいのです。

実戦図9

白1はまたバランスの一手ですね。白3の地点へオサエていれば普通でしたが、右辺よりも中央が大きいと判断しましたか。しかし黒2と打たれてだいぶ地がしぼみました。

黒6と打ち込みます。

実戦図10

黒2とシチョウを逃げ出す狙いを含んだ打ち込みでしたが、元々黒8からしぼむ場所だったので、どれほどの戦果が上がったのかわかりにくいですね。それに比べて白11は大模様に蓋をするような手で、これで中央は完全に白地になりました。黒は早めに11付近へ先着する方が良かったかもしれません。

実戦図11

形勢は白有利ではあるものの、実際はそれほど大差ではありません。見た目は中央が大きいので大差に見えてしまいますけどね。ヨセ勝負です。

実戦図12

黒15は張九段が捻り出した強手。

参考図

白2と繋ぐと黒3から下辺はコウになります。少し白の負担が重いコウなので、あまり選びたくない図ですね。

実戦図13

そこで白3と4を交換したのが上手い返し技。後術しますがこのおかげで白5と繋げます。ただそのかわり黒8と抜いて中央が減るので、やや黒が得をしています。

参考図1

白3が上手い理由は、白11の切りが黒8をアタリに出来るからです。なので黒6のノゾキが成立しなくなっています。

参考図2

ですが白7と繋いでしまうと、今度は黒10が成立し、改めて下辺はコウになりそうです。

この諸々の読みが背景にあり、実戦の着手は両者ともに最善のヨセを選択していたと言えるでしょう。

実戦図14

残されたヨセはあとわずかで、もう形勢が動く事はありません。白勝勢です。

実戦図15


白10(黒15の左

白20完。白中押し勝ち。

最後は張九段うっかりしたかもしれませんね。白20と切られて隅の二子がピンチです。

参考図1

本当は黒1とアテたいのですが、白2とアタリされた時に、この四子を助けられないのをご確認頂けるでしょうか。黒はダメヅマリに泣いています。かといって黒1以外の手では隅の二子を無条件で助ける手がないので、投了もやむないしです。

まとめ

残念ながら張栩九段は一回戦敗退となりました。最後はうっかりだと思いますが、そこをケアしてヨセ切っても3目半負けだったので、勝敗の影響はない良いうっかり(?)でした。


本局は張栩九段の布石構想に目を奪われました。四隅を確保してからの右辺へ突入。敢えて白に大模様を張らせる思い切った作戦でした。局後の感想で張九段が「白も囲い方が難しい」と言っていたようですが、まさにその通りで結果ほど白に余裕のあった勝利ではなかったように思えます。

ただやはり申眞諝九段は強い。やや打ちやすい程度だった碁形を巧みに優勢、勝勢へと持ち上げた好局だったと思います。


申九段は明日二回戦で韓国の先輩朴廷桓九段と対戦します。




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