本因坊秀栄の負けない技術
こんにちは。みやれーです。
今回紹介するのは明治時代の名人、本因坊秀栄です。
秀栄は白番での軽やかな石運びが美しく、また形勢判断やヨセなどの終盤戦を得意とします。
つまり全てに置いて強いです。全盛期は他の棋士を圧倒していました。
本局の秀栄は一つのミスから苦境に立たされます。ずっと劣勢ではありますが、決して敗勢にはしない。離されぬよう常に一歩後ろを走り、相手の一瞬の隙を待ち続ける。秀栄の『負けない技術』が光る碁だと思います。
黒番石井千治。白番本因坊秀栄。
実戦図1
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白の秀栄は軽い打ち方を好む棋士です。
対する黒の石井千治は力強く戦う碁。本局でも黒11や黒19が強い打ち方。これだけでも難戦が予想されますね。
実戦図2
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上図白2の反発に、黒3と隅へフリカワリに行きましたが、白12まで進んでみると、白の厚みが素晴らしく、左上は白が一本取りました。
実戦図3
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上図白4が中々厳しい。ここに打たれて、黒の打ち方が難しくなりました。
黒7、9と切って形は得ましたが、隅を白が取り優勢です。
しかし、白22が大問題。黒23、25で間に合わせ、黒29と飛ばれて白がはっきり損しました。白苦戦の始まりです。
実戦図4
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上図黒7と打ち、上辺黒は活きです。
苦戦の白は白12と打ち込み、さらに白14と潜ります。だいぶ難しく打っていますね。
実戦図5
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上図黒3は上手そうな一手。白が低く構えたので、黒は中央で戦うのが一番有利を取れます。
白は中央を直接逃げ出しはせず、下辺の模様経営に力を入れました。というより、逃げ出しはほぼ無理でしょう。
勢い中央と下辺のフリカワリとなりました。しかしこのまま右下が地になるとは思えません。黒が入ってきたからが勝負です。
実戦図6
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さあ、上図黒1から最後の戦いです。白は活かす訳にはいかないので、何が何でも取りに行くしかありません。
そんな勝負の中、黒15が素晴らしい妙手。その効果は黒25の時に現れます。
参考図1
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上図がその局面ですが、もし黒1(実戦図6の黒25)に白2と渡ると、黒3の切りが成立する関係で、黒は活きる事が出来ます。
なので実戦図6の白は最善の手段。ですが黒29、31、33のポンヌキが大きく、黒がポイントを上げました。黒優勢。
実戦図7
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しかし上図黒1が問題の一手。この打ち方はあまり稼いだとは言えず、せっかくの勝てる碁を落とす原因となりました。
参考図2
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黒1は上図のようにヨセるべきで、これならば黒が勝ちです。
実戦図8
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最終手まで載せました。(白40まで)
白4目勝ち。
最後まで棋譜は残っていませんが、白の4目勝ちだそうです。
この碁は秀栄のミスもあり、長い時間黒の優勢が続きましたが、じっと我慢して勝機を見出だすあたり、流石秀栄です。
最後は黒の石井千治の不可解なミスでしたが、白にすぐ後ろをずっと追い掛けられての疲労が出たのかもしれませんね。特に最後の勝負かと思った右下で上手くやり、気が抜けるタイミングでした。
面白い熱戦で、両者の名局と思います。
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