本因坊道策の棋譜に見る手筋とは何か
どうも!こんにちは。みやれーです。
本因坊道策の強さはもちろんの事、かっこよさでも歴代の棋士でトップクラスだと思います。
道策の魅力は大きく分けて二つあり、
- 一見自由奔放に見える打ち方
- 誰もが唸る切れ味鋭い手筋
これが道策のかっこよさであり、魅力であり、人気の理由です。
なので今回は、道策の鋭い手筋を見て、手筋とは何かを感じてもらいたいと思います。
実戦譜
実戦図1
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黒番は道策の師匠、本因坊道悦です。
今から350年ほど前の碁ですので、布石の打ち方が今とは似ても似つかないくらい、別のものとなっています。当時は隅よりも辺を重視する考え方だったようで、上下左右の辺に二間ビラキが出来ていますね。
実戦図2
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黒7、9は狭い所を打っているようですが、黒の根拠を安定させる意味でとても大きい。
白10から道策が独特の手法を見せます。白10〜黒21まで。白は地を損する代わりに厚みを築きました。しかし、下辺は黒の二間ビラキが待ち構えているので、厚みを築いた所で、この後どうするのかが不透明です。なので通常は避ける進行に見えますが、道策はこれで白打てると見ています。
実戦図3
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上図白2は黒を攻めたいとの意図。周りの白が厚いという事情もありますし、ここは黒3と外して攻めさせない手法は納得です。
実戦図4
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白2は機敏なツケで、白10と黒一子を抱えた形が厚く、右上の白は攻められにくい格好となりました。黒7のサガリでは8の所へ繋いで、中央を厚くする打ち方もあったかもしれません。
白14は先手を取る手筋。次の白の一手から道策の技が冴え出します。
実戦図5
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白2とボウシをしてから白8とツケたのが目一杯の頑張り。やや強引ですが、左右の白を力づくで繋げにに向かっています。
そこで黒11とハネた場面。次の道策の一手が正に手筋でした。
実戦図6
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白2!かっこよすぎます!!!
黒1とハネた瞬間、白2に目が行く人がどれくらいいるでしょう。打たれて見ればなるほどと思えても、実戦では中々気付かない手筋だと思います。
このツケの意味を少し図で解説します。
参考図1
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白2の狙いは白4の切りにあって、もし黒3とハネで受けると以下白16まででシチョウになります。これは黒ツブレですね。
参考図2
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上図黒3と打っても、下辺は白に破られます。
つまり黒に上手い抵抗手段がないのですね。
実戦図7
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実戦は辛いですが黒3と我慢しました。ならば今度は白4〜12まで押さえ込んで、白に無駄な石が一つも無く全部つながりました。これは白の作戦が成功したと言えそうです。
手筋とは簡単に言うと「良い手」になるのですが、ただの良い手ではなく、石の力を最大限に引き出した良い手を手筋と言います。上図で言えば、周りの厚みを使い、白4に切りを作った瞬間だからこそ、白2が絶妙の手筋になるのです。
実戦図8
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上図白2も手筋ですが黒7も上手い返し技。白は切る事が出来ません。
このあたりの両者の攻防もギリギリを渡っていて面白いです。
実戦図9
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黒17まで。
黒3目勝ち。
昔の棋譜ということもあり、上図までしか手順が残っていません。黒が3目勝ったという結果だけ伝わっています。
最後の白8も鑑賞して欲しい手筋。絶妙なヨセなのです。