囲碁は好きですか?

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第74期本因坊戦挑戦手合七番勝負第三局!井山裕太VS河野臨

どうも!こんにちは。みやれーです。

6月4日、5日の二日間、北海道函館市五稜郭・函館奉公所」にて、第74期本因坊戦挑戦手合七番勝負第三局が行われました。今記事では封じ手以降の手順を振り返りますので、1日目の手順は前回記事よりご覧ください。

前回記事

井山裕太VS河野臨

昼休憩中の対局室に大きな氷が持ち込まれたと、誰かが中継しているのを目にしました。本因坊文裕の激しい着手にとうとう碁盤が熱でも持ったかと思いましたが、どうにもそこは冷房が無い部屋らしく、碁盤でも頭でもなく部屋を冷やしたいようです。最近蒸し暑いのは北海道でも変わらないのですね。盤外でも過酷な戦いを強いられています。


黒番 河野臨 白番 本因坊文裕

封じ手

封じ手黒1のツケでした。
下辺の戦いはひと段落かと思っていたので驚きです。まず大場を打って様子を見るのでは甘いのでしょうか…。

実戦図1

一応黒1の二路左にツケることで、中央はコウになるようです。黒3と受けてその狙いを虎視眈々と狙っていますね。白もただ受ける訳にはいかないので、白4の大場に先行しました。

参考図

すぐは打たないものの、黒1〜5が先手と見れば下辺の黒地は鉄壁なので、黒7の大場に回って十分かと思っていたのですが、実戦の動き出しを狙うのであれば、黒5が先手にならないので、実戦図1の黒3に一手かけて、黒地をしっかりと補強した訳ですね。

実戦図2

黒7が部分的にコウに出来る一手。ここで打たれた白8が気の利いた妙手でした。流石本因坊文裕の細やかな芸ですね。

参考図1


白10(黒13の下コウ取り)

まずコウとは上図の手段になります。黒17のキリが先手なため、下辺の白石と黒石の攻め合いですね。これは所謂「本コウ」と言われるコウになります。

参考図2

そこで白2の意味ですが、もし黒3と受けると白4が先手になってしまうため、白石がタケフとなり、切断の味が無くってしまいます。これは黒が駄目ですね。そのため実戦の受け方となりましたが、この交換が後々大きな活躍を見せます。

実戦図3

黒1では前述のコウにする手段がありましたが、敢えて変化に出ました。白2で黒六子は取られましたが、黒3から右上を主戦場と決めたようです。

参考図1


白6(黒9の下コウ取り)

仮に黒がコウを仕掛けた場合ですが、次図に続きます。

参考図2


白3(9の地点)
白5(黒10の下コウ取り)

黒がコウに勝つかもしれませんが、白11、13と連打されては、黒に自信のない形勢でしょうか。
黒からのコウダテは左下隅が利きそうなので、白11に受けてコウ争いが続きそう。正直どう決着するのかわからず、この進行は難解でしたね。河野九段は危険と判断したのかもしれません。

実戦図4

黒5と打ち込んで上辺へ転戦。白6付近に利き筋が多く、かといって上辺で緩む訳にもいかず、白にとって苦しい戦いを強いられています。

実戦図5

白3が愚形ながも好手。白7までを想定した時、形は悪いですが一応封鎖することが出来ています。
河野九段は先手を打って黒12へ先着。この地点は両者にとって喉から手が出るほどに打ちたかった大場で、ここに回れては黒好調。右辺はの黒石は死ななければ良いという態度です。

実戦図6

白1で眼を奪われても、黒8に脱出口があり本体は無事です。白17までで、下辺から始まった戦いがひと段落しました。
黒が得たものは、下辺と右下隅の黒地。そして上辺の白模様だったものが黒地に変わっていますね。
白が得たものは、下辺黒八子と右辺の白地。上辺の厚みっぽいものは、断点が多く薄気味悪いですね。
結果この戦いは上辺で黒地を得たのが大きく、黒が得をしているようです。残りはヨセですが、黒が先手なのも美味しいですね。

実戦図7


白6(黒7の右)

黒1、5の大場へ回って盤石の体制を築きつつありますが、白6、8が随分前に打った石を活かした好手でした。本因坊文裕の細やかな芸がここにきて実を結んでいます。

実戦図8


白2(白8の地点コウ取り)
黒5(白8の左コウ取り)

下辺は黒1とアテてコウです。ただ白が上手いのは、下辺を黒9で放置しておいてもコウだということですね。白12と大場へ先行して追い上げを図ります。

実戦図9

白6で目一杯中央を囲いました。しかし黒1も相当大きいので、囲われたのは仕方ないでしょうか。
ヨセは白が頑張っていますが、河野九段は計算が出来ていたといいます。

実戦図10

白2がヨセの上手い手筋ですが、黒3は対応を誤りました。自然に白10の地点へ出ておく方が優ったようです。

実戦図11


白4(黒7の左)

白12でコウを解消しましたが、コウダテは白に多く、黒13の地点へ下がっていたら白が有望な形勢だったのではという説があります。実戦は微細な形勢です。

実戦図12


白1(黒2の左)

白19はコウダテが多いことを見越して得しにいった手。通常は20の点へ繋ぐものですが、コウに勝てるのであれば1目得出来ます。

実戦図13


白3、白9白15(白21の地点コウ取り)
黒6、黒12、黒18(白21の左コウ取り)

コウ争いが続いています。とても細かい勝負とあって、コウダテにも気が抜けません。

実戦図14


黒3、黒9(白12の左コウ取り)
白6(白12の地点コウ取り)

まだコウダテはありましたが、河野九段は計算が出来たらしく黒13で譲りました。しかし、その計算が「1目」間違えていたと後に本人が語っていました。

実戦図15


黒5(白6の右)

黒27完。白半目勝ち。

そのたった「1目」の計算間違いが、ここにきてまさかの命取りでした。
黒1が敗着です。ここは白2の地点へ打つ方が1目得であり、黒が半目勝ちになるはずの碁でした。推測するに河野九段は、黒1以降の手順を読み切り、自身の半目勝ちを確信したため、部分の損得よりも黒1へ指が伸びてしまったのでしょう。しかし実際は河野九段の計算に1目の誤りがあったため、黒1が敗着となってしまいました。

本因坊文裕の追い上げがあったからとはいえ、幸運の勝利でしたね。

まとめ

第74期本因坊戦挑戦手合七番勝負第三局は、白番本因坊文裕が半目勝ちを収め、今挑戦手合で初勝利を上げました!

この結果、対戦成績は挑戦者の河野臨九段から見て2勝1敗となります。


本局は1日目から黒が上手く立ち回り、大ヨセに入った時点でははっきりと黒有利だったと思います。
しかし白が下辺コウのヨセから中央を目一杯囲って地合いは急接近。脅威の追い上げを見せました。
そして最後は黒が半目残していたところを、1目の計算ミスから生まれた小ヨセのミスでまさかの大逆転。改めて勝負の怖さ、面白さ、ドラマを見た一局でした。


続く第四局は6月13日、14日に静岡県沼津市「旧沼津御用邸」で行われます。


この幸運を機に本因坊文裕が勝利を重ねれるか、河野臨九段が立て直すことが出来るか。本局を経ての第四局がとても楽しみです。




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