王銘琬VS劉昌赫!第3回ワールド碁チャンピオンシップ国際予選準決勝
どうも!こんにちは。みやれーです。
1月24日から日本棋院本院で「第3回ワールド碁チャンピオンシップ」の国際予選が始まりました。29日までの六日間、日中韓のトップ棋士89名が東京に集まり、計3枠しかない本戦出場枠を争います。
27日は準決勝が行われる日。現在シニア枠では日本勢3名、韓国勢1名が勝ち残っていますが、本記事では日韓決戦である、王銘琬九段VS劉昌赫九段の対局について感想を書いていきます。
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王銘琬VS劉昌赫
王銘琬九段。57歳。出身は台湾ですが、日本棋院東京本院所属の棋士です。棋風は中央へ石を運び、高い所から相手を低く押し付けていく独創的な序盤展開が特徴。「ゾーンプレス」と名付けたその戦法を使い、本因坊を2期、王座を1期獲得するなどの経歴があります。最近ではAIの研究に熱心であり、自身の棋風とAIの棋風を融合させて更に進化を続けています。
一方の劉昌赫九段は本棋戦の2回戦で高尾紳路九段を破っており、その記事で経歴を紹介したのでそちらをご参照頂きたい。
黒番 劉昌赫 白番 王銘琬
実戦図1
序盤早々白12が王九段らしい中央重視の一着。地で考えれば黒17との交換で損をしていますが、中央でそれ以上の得が出来ると信じているのですね。白18以下はAI流の手法。この辺りを見ると、やはり王九段は棋風が変化していると感じます。以前の王九段でしたら白18で上辺星あたりに構えて大模様を作っていたでしょうから。
実戦図2
黒の大ゲイマジマリに白1とツケていくのもAI流の手法。一見黒6までで黒地を固めてしまったようですが、AIは逆に、これ以上黒地が大きくならないよう制限したと考えているみたいで、中々有力な手法です。
白7と一度切るのは様子見。結局は取られるのですが、実戦の様に白9、11と外側に白石が増えるのであれば、白7と打った効果は十分にありそう。最初は何も無かった右辺で白19と威張れるまでに成長しました。
参考図1
少し白1のキリの意味を考えてみましょう。まず黒2とすぐ取る場合ですが、この場合白3が先手になるのが白1の効果ですね。白5とヒラければ不満がありません。実戦図の黒8はこの白3を嫌っての行動でした。
参考図2
実戦以外で言えば、黒2、4と取ることも可能です。その場合白は5〜9が先手で打てるので、白11と高くヒラいてひと段落。基本的に黒は実戦と上図とで比較して、どちらがその碁でより良いかを選ぶことになります。
実戦図3
白2は簡明な手でしたが、3の地点へオサエていく手も十分に考えられました。王九段は実戦で形勢十分と見たのですかね。
黒5のハネ一本で黒7は最大限の頑張り。中央はある程度無視して大場をどんどん先行したいという意思表示ですね。白は気合いで中央を連打しました。
実戦図4
黒1から地を稼ぎ、黒11から堂々の動き出し。黒21まで左辺を完全に黒地とし、黒23へボウシですか。中央付近は白の所有地と見ていましたが、黒はここが我が家だと言わんばかりの暴れ方。白としては頭の一つくらい叩かないと気が済みません。
実戦図5
黒8は如何なものでしょうか。黒10が絶対先手な所に魅力を感じたのかもしれませんが、そんな所にはこだわらないでさっさと逃げ出した方が良いと思うのです。
実戦図6
白6と先手で補強してから白12が上手いですね。白14、16で三子を切り取ることが出来て、地合い勝負で争う可能性が出て来ました。碁形的にも白が厚いですし、やや白が有望な形勢なのではないでしょうか。
実戦図7
おそらく王九段も白形勢面白しと見たのでしょう。白2〜黒11まで先手を打ち、計算をしやすくしてから白12の大場へ回りました。白2〜11は形勢が悪い場合だと、相手がミスする可能性を少なくしただけの悪手になるのですが、形勢が良い場合だと、相手の打つ手を制限し、地の計算もしやすくする良い手になります。この辺りは強い人のテクニックですね。
実戦図8
しかし改めて地合いを計算してみた所、全然細かい勝負でした。中央が厚い分やや白に分があるように見えますが、決して緩んでも勝てるような碁ではありません。更に白5がヨセのミス。