囲碁は好きですか?

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何故星への三々入りが有力なのか

こんにちは。みやれーです。


囲碁とはシンプルなルールながら、とても奥深いゲームです。

局面の数は10の360乗らしいですし、僕たち人間では中々理解しがたい深さと広さを囲碁は持っています。囲碁は神様が作ったゲームという人もいるくらいですから。


しかし囲碁を作ったのは神様でも、善悪を作ったのは人間です。


この手は良い、あの手は悪いと言っても、そこは人間ですから、間違う時もあります。中には、大勢の人達が「この手は良い」と言っていた手が、後々悪い手だったと判明する事もありました。その逆も然りです。


今回は題名にもある通り、『何故星への三々入りが有力なのか』について調べて行きます。AIが打ち出した事で話題を呼び、最近プロの棋譜でも頻繁に登場する、隅の星への即三々入りですね。
昔は「はっきり悪い」と議論の余地すら無かった手法ですが、今年に入ってから「有力」と見事に手の平を反された珍しい定石です。

もしかしたら、「すぐにでもその理由を知りたい!」とあなたは意気込んでいるかもしれませんが、理由を調べる前に順を追って、以前にもあった似た例について、評価の手の平反しが起きた定石についても、話していきたいと思います。

新布石革命とは

新布石とは1933年、まだ若き呉清源木谷実両者が発表した、それまでの常識とは掛け離れた革新的な布石です。

例えばこんな布石。

黒番呉清源。白番本因坊秀哉。

棋譜再生

それまでの布石は白2、4のような小目が中心の布石であり、その派生として目ハズシや高目が打たれた程度でした。
その常識に文字通り一石を投じたのが、黒1、3といった三々と星です。特に三々は、白番の本因坊秀哉が当主を勤める本因坊家において、禁じ手とされ打ってはいけない手でした。つまり悪い手と見られていた訳です。

ただ、黒の三々と星にもちゃんと言い分があります。
小目には必ずカカリという弱点が存在し、隅の優位を主張出来ているとは言いがたい。そのため、小目からシマリ(白10、14など)は急がれる大場であり、二手かけて隅の優位を主張します。
対して三々や星は、その一手だけで隅の優位を主張し、一手得した分、辺や中央へ足早に打とうといった意図があります。この一手得という考え方が新しかったのですね。

この新布石革命の後、呉清源木谷実両者が碁界で大活躍したこともあり、現在では三々や星は常識として認知されています。

囲碁は根拠が大事

新布石から数年経った1950年、またも呉清源さんが一つの常識をひっくり返しました。

それが下図。


棋譜再生

今回は左下、部分的な形のみで話を進めます。

これは昔から形変わらず定石とされていましたが、黒不利との判断が定説でした。隅に縮こまった黒が辛いだろうとの意見です。
それに異論を唱える人は長らくいなかったのですが、呉清源さんが声を上げます。

これは黒が良いと。

どういう事かと言うと、黒は隅で完璧な生きを得ているのに対し、白はまだ眼が無い。しかも次は黒の手番。回りの状況によって左辺から打つか、下辺から打つか、はたまた手を抜くか、なんでも出来るのが大きく、黒が良いだろうとそういう意見です。
実際呉清源さんは手合いでこの定石を駆使し、勝ち星を重ねました。次第と回りの評価も変わっていき、今では黒良しが定説です。

根拠の大きさが改めて認知された定石でした。

人間が発明した三々入り

星への三々入りは、実は全く打たれていなかった訳では無く、条件付きで打たれていました。つまり、星へのカカリが悪い手の場合です。
しかし、それの例外が始めて破られた形があります。


棋譜再生

黒の中国流の布石。白6のカカリは普通ですが、続いて白8の三々入りが世間を賑わせました。

それまで白8では上辺へ開くのが常識で、不満を持っている人はほとんどいませんでした。
では何故三々に入るのかですが、一言でいえば、厳しさを求めた結果です。

三々に入る事で得られるものは、まず実利ですよね。黒の地が減って、白の地が増えています。
そして上図の場合は特に、外側の黒に弱点が生まれているのが大きい。
例えば白18。この抑えが意外と有力なのです。黒19ならば白20と開いて、隅を取りつつ上辺も打った結果となり、なおかつ白16の左に穴も空いています。

三々入りといえば、それまで地を取るもの、といった認識があったのですが、この中国流への三々入りから、外側の石の弱点を狙うための三々入りという考え方が生まれたのです。

星への即三々入り

さて、ここまで見てきたものをまとめると

・三々や星は一手で隅の優位を主張している
・根拠を持つ事は大きい
・三々入りは外側の石の弱点を狙う厳しい打ち方

といった新しい考え方が徐々に生まれてきた事がわかりました。

それを踏まえた上で、AIの打ち出した星への即三々入りを見てみましょう。


棋譜再生

上図は極端な例ですが、黒5が問題の即三々入り。以前は善悪の議論にすらならなかった手です。

これが何故有力なのか。一つ一つ整理します。


・根拠を持つ事は大きい

これは三々に入る事でクリアしていますよね。黒に隅の根拠が出来て、白は無くなっています。


・ 三々入りは外側の石の弱点を狙う厳しい打ち方

これも、黒15と先手で左辺を割る事で、左上白の壁の攻めを狙っています。もし白が守りの手を連打するのであれば、それも黒成功です。


・ 三々や星は一手で隅の優位を主張している

もし白が攻められることになれば、最初に打った白4星が、小目と比べても隅の優位を取れていなかった事がわかりますね。



など、考えてみると意外と理にかなっているのです。もちろん三々入りが良い事づくしではないですが(石が低いなどの欠点はある)、AIが登場する前からあった理屈から、それほど大きく反れている訳ではないようです。

これが三々入りが有力と言われる理由。こうやって見ると、AIも案外人間と差ほど変わらない打ち方をするのですね。
これからも人間とAIが一緒に強くなっていく未来を目指したいですね。




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