平成四天王 山下敬吾
こんにちは。みやれーです。
囲碁の醍醐味といえば、[攻め]を上げる人が多いのではないでしょうか?
相手を徐々に追い詰めながら、あわよくば殺してしまう様はとても爽快です。(※注 囲碁の話だよ)
囲碁において、攻めるのはとても有力な作戦です。でもだからこそ、相手は攻められないよう細心の注意を払って打ちますから、そう簡単にはいきません。
攻める側にも技術が必要になります。
よく言われるテクニックは、カラミ攻めとモタレ攻め。
カラミ攻めは、攻めれるような弱い石が二つある場合、それを同時に攻め上げる厳しいテクニック。
モタレ攻めは、攻めれる弱い石を直接攻めず、遠巻きに自陣を固めて、相手にプレッシャーを掛けるテクニック。
どちらも攻める側の常套手段です。
しかし稀に、そんなテクニック云々をすっ飛ばして、己の腕力で相手を攻めてしまう人がいます。
山下敬吾九段もその一人。
持ち前のその腕力で強引にでも攻め続け、一般的に攻める対象でない石ですら取ってしまう、日本囲碁界を代表するファイターです。
普通強い人ほど守りが上手いもので、プロ棋士であれば尚更。
そんな世界で、次々と相手の石を攻めてしまう山下九段の腕力。見ていてこれほど気持ちの良いものはありません。
山下九段に隙をを見せると、その瞬間破滅します。
黒番山下敬吾。白番加藤充志。
実戦図1
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白16は別の手もあるでしょうが、自分を固める事に専念した打ち方です。相手が山下九段だから用心したのかもしれませんね。
実戦図2
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上図黒9、13は凄い頑張り。戦闘する事を誘っています。
その意図を察してか、白14から白はかわし気味の手を打ってますが、実戦の形は黒の頑張りが成功。黒に不満はありません。
実戦図3
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さあ、上図黒3からが山下九段の真骨頂。
地はドンドン損をしてますが、黒9と打つ事で、かわして打ったはずの左辺の白石が切り離されてしまいました。
ここまで豪快に地を損してまで攻めを選ぶ事は中々出来る事ではありません。特に実戦の場合、攻めれる石は左辺の白石だけ。もしも簡単に生きられると、黒はすぐ負けになります。
実戦図4
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白は唯一広い中央へ顔を出しました。攻めている黒が景気よく見えるかもしれませんが、ここまで黒の得た得はあまりなく、中央に地を付ける展開にもなりそうにありません。
ということは、黒は左辺から伸びる全ての白石を召し捕るつもりでしょう。
しかしそういう作戦は、もし生きられてしまった場合の損害が大きく、普通は採用し辛いもの。
山下九段の魅力は、そんな全取り作戦を実行してしまう所。
とても男らしいです。
実戦図5
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上図黒17は先手。手を抜くと、18の所へ打たれて右辺の白が死にます。
しかしここまで進んでみると、白に生きる手段が見当たりません。
いつの間にか右辺白とのカラミ攻めにもなっていて、上手く白を全滅させました。
実戦図2からは想像もつかないような有様です。
実戦図6
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最終手まで載せました。(黒17まで)
黒中押し勝ち。
これで白に生きる手段はなく、投了となりました。
これほどの大石が死ぬ姿は滅多にお目にかかれません。
囲碁には「大石死せず」との格言もあるように、石は大きくなればなるほど死ににくくなります。
しかし山下九段はそれをものともせず取ってしまいました。
こんな碁、山下九段以外に打てる人がいるでしょうか?
トップ棋士は皆そうですが、自分にしか打てない碁を持っているもの。
山下九段の場合はそれが特に顕著です。
自分の好きなものを続けて、それを極め、人マネでない自分だけのものを作り上げる。
そんな棋士の姿が本当にかっこよくて、大好きです。
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