安井知得、本因坊元丈の芸術的一局
こんにちは。みやれーです。
今回は僕が好きな本因坊元丈と安井知得の碁を紹介します。
本局のキーワードは『美しさ』です。
黒番本因坊元丈。白番安井知得。
実戦図1
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白4の高目は、むしろ元丈が好みそうな手法ですが、今回は知得が打ちました。
それにややペースを乱されたか、黒19が疑問の一手。白22が好手で、黒23、25と低くされたのが辛く、黒19の揚げ足を取られました。
コミ碁ならば白打ちやすいでしょうが、当時はコミ無しなので、まだ良い勝負でしょうか。
実戦図2
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上図白4の打ち込みから白14まで、互いにゆったりとした応手。この緩やかな流れが古碁の良いところです。
黒17一本で黒19は不思議なステップですが、理由があります。
参考図1
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もし上図のように白4と繋いでしまうと、黒5のワリコミが厳しい。白10から抵抗しても、黒1のツケ一本のおかげで黒15と逃げ出しがあり、黒17までで白がアウトです。
なので実戦図2の白20は仕方ないのです。
実戦図3
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上図白6に対し黒はどうサバくのか思えば、黒9、11とは。中々気付かない発想です。
現在の状況として、黒はまだ上辺の一団の眼がはっきりしていないので、そことのカラミ攻めだけは避けなくてはいけません。なので、黒9、11と低いですが、何よりも根拠を大事にする作戦を取ったのです。面白いですね。
白も相手の思い通りに打たす訳にはいかないため、白12や18と頑張りました。
実戦図4
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上図黒7となっては黒のサバキは成功。黒11、19など、今度は黒に勢いが出てきました。
実戦図5
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上図白10が古碁らしいというか、知得らしい一手です。実戦の囲い合いでは、大差ではないですが、黒が勝ちです。なので白10では、もっと深く黒地へ入る方が勝負は難しいかもしれません。しかし知得は無理と思った手は打たず、正しい手を打つのです。今となっては、正しい手が負けの手になるとわかってても。
それが知得流の美しさなのでしょう。
実戦図6
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知得といえばヨセの名手ですが、元丈も流石。ここまでくれば損をするような事はありません。
実戦図7
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最終手まで載せました。(黒75まで)
黒3目勝ち。
本局はとても美しい一局でした。
元丈の冴えた技と、知得のじっくりとした芸風。二人の良さが存分に発揮されています。
そして終盤、おそらく負けとわかっていたであろう知得が、あえて難戦に持ち込むような真似はせず、負けに甘んじたシーンは印象的でした。
実戦図5の白10。あの手のおかげで、この碁が棋譜として美しく残る事が出来たと言えます。現代には無い、棋譜を大事にする感覚ですね。
そしてこの二人の碁に対する姿勢が、何よりも美しいですね。
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